2014年12月27日

嫉妬シット

 別に付き合ってるわけじゃない男友達が知り合いの女の子と親しくし始めて、え? いつの間に? って驚いたりするだけじゃなくて嫉妬もしてしまうのって私くらいのものかと思ってたけど、案外そうでもないらしいと貴志の話を聞いて思う。いやでも貴志は私の恋人なんだから、あっちこっちで嫉妬を振りまく必要なんかないやろって突っ込みそうになるけど、あ、そうか、私のこの気持ちも嫉妬なのだ。貴志が私以外のものに嫉妬していることに対する嫉妬。私、なんかいじらしい。
「そういう心理わからなくもないなぁ。自分のものでもないのに横取りされたってショック受ける気持ちね。あ、別に恋人だからって自分のものだって意味じゃないけど……。私もそうやけど、貴志も案外欲が深いんかもなぁ」
「なるほど~。欲か。遥っていう十分すぎる恋人もいて、自分では満たされてると思ってたけど。そうなんかな~、言われてみればそうかもなぁ。遥、かわいいし頭もええし優しいしかわいいのになぁ」
 こいつ、今かわいいって二回言った。二回言った。
「……わざとやってる?」
「え? 何が?」
 私はつい破顔する。そうだ、私は貴志のこういう天然なところが好きなのだ。恋人にならなんでもあけすけに話をしたり、本人に直接かわいいとか無自覚に言えちゃったりするところが、なんかガキっぽいというか童貞っぽくて普通の女の子たちからは敬遠されがちかもしれないけれど、私に言わせればそういう純朴さは大事だし希少価値だ。愛しい。貴志。私は経験の限りを尽くした性技で貴志を虜にする。私以外のものに嫉妬なんてさせたくない。ジュボボボボってフェラして、ズルズルヌュチってあそこでかき回す。「あ、いく、いく」貴志は宣言してからしばらくはいかない。ちょっと前まで童貞だったくせにわりとしぶとくて、貴志が果てる頃には私はいつもくたくただ。そのぶんやり甲斐もあるわけだけど。貴志を私色に染めてやろうという計画は、しかし付き合い始めてから四ヶ月くらい経った頃に破綻する。後から知ったことだけど、私と付き合い始めるよりずっと前から、貴志は別の女の子と交際していたのだ。貴志は最初から童貞ではなかった。
 あーマジか。私の銀行口座からこっそり五十万下ろして逃げたクソ野郎がほんとに貴志なのか全然理解が追いついてない。っていうか四ヶ月かけて五十万ってちょっとみみっちい。とはいえ私にとってその額は大ダメージで、仕方がないので親に事情を説明してまるまる五十万貸してもらう。親は全額くれるって言ってたけど断った。なんでそうしたのか自分でもはっきりしないけど、たぶん親に余計な負担をかけたくないって気持ちよりは盗まれた額がそのまま補完されてしまったらこの悔しさや怒りが消えてしまいそうだと思ったのだ。私はこの悔しさや怒りをなくしたくない。というより、然るべきところにぶつけなきゃ気が済まない。貴志殺す。ついでに相手の女も殺す。だけど二人とも逮捕されてしまってしばらくは手が出せない。早くしないとこの気持ちがしぼんでしまいそうな気がするし、そんな気がする自分の熱されやすさ冷めやすさに悲しい気持ちにもなる。実際殺すわけもないし、私のフラストレーションはどこへ向かえばいいのだ。悶々。
 実際そんなこんなで日々の仕事をこなしたり親にちょっとずつ借金を返済したり涼太っていう新しい年上の恋人ができたりするなかで私の悔しさや怒りはしぼんでしまって、なんだかなーと思う。涼太は微温的な人で、よく言えばクールなんだけど、あまり互いが踏み込み合うことをよしとしないところがあって何ヶ月か話せずにいたけど、ついに貴志のことを話すことにする。
「なるほどね。だいたいわかったけど……。で、その話を聞かせて俺にどうさせたいわけ?」
「う」
 そうだ。涼太はこういう奴だった。
「それがわからんってところが問題と言いますか……。なんか、あれから気が晴れなくて」
「要するに、その貴志やっけ? そいつとの事件の自分なりの落としどころがわからなくて、遙は困ってるんか」
「あ、うん。そういうこと」
「……うーん……難しいな。あ、難しいのは落としどころを見つけることやなくて、落としどころを見つけてええんかってことね」
「はあ? そんなん、解決したほうがええに決まってるやん……」って言ってから気付く。「ああ、そうか。落としどころを見つけることが必ずしも解決ってわけやないんか……」
「そらそやろ。たとえばやで、その貴志が実はいい奴で、最初から付き合ってた女に脅迫されたか唆されたかされただけかもしらんやろ? って話を俺がもっともらしく説明して、遙は納得して……、それは一つの落としどころやと思うけど、解決にはならんと思う。問題は別の所にあるんやないか」
「そうか……。問題は、私が自分自身の悔しさとか怒りを忘れかけてて、そのことに対してむしゃくしゃしてること……」
「俺もそうやと思う。やから最初から無理に落としどころを見つけようとせなんでも良かったんや。死ね、殺すぞってずっと思ってたらええねん。そういう強い気持ちを無理に消化させようとするほうが間違ってる。そういうのは、時間の流れに任せたらええんや。そのうち自然と解決するからな」
「そっかー……」
 なんかあっさり? 私の心のもやは晴れた気分だ。さっきまでの肩の力はなんだったのだ。やっぱり涼太に話して良かったと思う。新しい恋人が涼太で良かった。
「っつーかその話聞いて俺の方がむしゃくしゃしたわ。貴志、いつまで遥のこと引きずらせんねん。……ちょっと嫉妬やな」
 ワオ! こんなこと涼太に言われたの初めてだしなんかすげー興奮。いつもの涼太なら悩み事相談してもけっこうスルーされることが多いし、けっこう焼き餅焼きなのかも? そういう一面も新鮮でかわいい。やっぱり話して良かった。涼太大好き。
 だから私は死ね、貴志って気持ちを胸に抱いてありのまま生きることにする。恋人も死ね。何度でも言ってやる。私がお前にやった嫉妬返せクソ。

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