2017年12月23日

映画『SLUM-POLIS』


二宮健監督『SLUM-POLIS』(2015)観た。むちゃくちゃすごい。

これが新しい『狂い咲きサンダーロード』になる作品なのだなと思った。
どちらも世界観で魅せる作品だけど、あの伝説と決定的に違うのは『SLUM-POLIS』がCTRにあったような若者の魂の叫びみたいなのから距離を置いて、あくまで「青春」とか「若さ故の過ち」という普遍的なものを描いたというところだろうか……。
とにかくクールでキザに振る舞う。
でもこれはちょっと表面的で、薄っぺらさはぬぐえなかったかも。瞬間風速的なキャラの活き活き感はいくつかあったにしても。

物語は地方の不良青年たちが都会に憧れを抱きながらもその土地に縛らて生きているところに、その垣根を越えて現れる女性の登場によって掻き乱される、というオールドファッションなプロットで、悲哀な結末はベタだけどグッとくる。

あんまり比べるのもナンセンスだけど、『狂い咲きサンダーロード』がかっこいいのは「上手くないのにすごい」ってところで、『SLUM-POLIS』は「上手くてかっこいい」んだよな。なんか大人びてるなぁと思う。

近未来設定になっているのはロマンというか、荒廃したスラムと近未来の都市を描くことで目に楽しい要素になっていて、この作品のいちばんの魅力はそこなんだけど、だからこそ惜しい部分も多かった。世界観を見せる作品だからこそね。でもこれが大学の卒業制作って言われたら嘘やろってなりますね……

ロケーションはよく考えるとちょっと変なんだけど、なぜかそこはあんまり気にならなかったな。ビジュアル的な魅力が勝っていたからかもしれない。
でも登場人物がそこで息づいて生活している土地、としての説得力がもっと欲しかった。
時代設定についても同じ。

2041年って設定の説得力がなさすぎるので、年代明記しないほうが絶対良かった。登場人物たちがだいたい2020年ごろに誕生したチルドレンだとも思えないし、「2041」ってクレジットされた直後にむちゃくちゃ今の(今でさえすでにちょっと古いような)クラブが出てきたの普通に突っ込みたくなった。
作中に出てくるPCがhpとかなのもせめて隠してほしかった気もする。

ディティールで勝負を仕掛ける作品ならそこは~~~!どうか!みたいなことを何度も思いながら、それでもハラハラしながら結末のむごさに苦しくなって見終えた。

アンナのことそんなに好きになれなったんですけど、アスがむちゃくちゃいいキャラしていて、序盤はそうでもなかったのに展開が進むにつれてどんどんいい顔になっていく。ラストのアンナとの掛け合いの回想(?)がすごかった……。

棒立ち状態で大勢に撃たれたのに腹部にしか傷を負わないヒロインとか、海岸でヤクザに撃たれた青年がその場にほったらかしにされることとか(いやそこは海に棄てん?)むちゃくちゃ「演出の都合」を感じてしまうし、ディティールでちょいちょい感じる違和感にも没入を妨げられてしまうのが本当に悔しかった

にしてもかなりよかったです。
普段こういうイケイケでカット細かく刻む編集はあんまり好きじゃないのですが、それでも気持ちいい画で最後まで楽しめたので自分のなかではけっこう驚いています。音の使い方がむちゃくちゃよかったから、そこが良かったのかな。
タイトルバック入るところの音の使い方とか、中盤アンナが金槌カンカンするシーンとかすごく気持ちよかった。

二宮健監督の次回作「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY」が楽しみ……と思ったのですが、マジかよとっくに公開していた……。

現在(2017/12/23時点)Netflixで配信中。卒業制作が全世界に配信されるって、やっぱりすげえ……

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