2014年12月4日

映画「インセプション」の結末をちょっとだけ解体してみる(ネタバレ)

 ふと、面白いお話がどのように作られたのか、逆算するように考えてみたいと思い立って、自分が物語を考えるうえで参考になればいいなという打算でこのエントリを書き起こしました。

 ということで、最近見たクリストファー・ノーラン監督・脚本・製作の映画「インセプション」の結末がどのように構築されていったのか、完全な想像でほんのちょっとだけ解体してみようと思います。全部ネタバレと言ってもいいエントリになるのでご注意をば。

 え? どんな話だったか忘れたって? というわけで思い出し用のあらすじコピペ。
 主人公のドム・コブは、人の夢(潜在意識)に入り込むことでアイディアを“盗み取る”特殊な企業スパイ。そんな彼に、強大な権力を持つ大企業のトップのサイトーが仕事を依頼してきた。依頼内容はライバル会社の解体と、それを社長の息子ロバートにさせるようアイディアを“植え付ける”こと(インセプション)だった。極めて困難かつ危険な内容に一度は断るものの、妻モル殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいるコブは、犯罪歴の抹消を条件に仕事を引き受けた。
 古くからコブと共に仕事をしてきた相棒のアーサー、夢の世界を構築する「設計士」のアリアドネ、他人になりすましターゲットの思考を誘導する「偽装師」のイームス、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」のユスフ、そしてサイトーを加えた6人で作戦を決行。首尾よくロバートの夢の中に潜入したコブ達だったが、直後に手練の兵士たちによって襲撃を受けてしまう。これはロバートが企業スパイに備えて潜在意識の防護訓練を受けており、護衛部隊を夢の中に投影させていた為であった。インセプション成功の為に更に深い階層の夢へと侵入していくコブたち。次々と襲い来るロバートの護衛部隊に加え、コブの罪悪感から生み出されたモルまでもが妨害を始めた。さらに曖昧になる夢と現実の狭間、迫り来るタイムリミット、果たしてインセプションは成功するのか。(Wikipedia)
  そして、結末はこうでした。
 コブが普段から夢か現実かの判断に使っている「トーテム」のコマが回っているカットでエンドロールに入る。コマが回り続けるのであれば、コブはまだ夢の中に居ることになり、コマが止まれば、現実世界で愛する子供たちの居る我が家に帰ってきていることになる。コマは少しずつ失速し、僅かにバランスを崩し始めるが、その結末、つまりコマが完全に止まってしまうのかどうかまでは分からない。その解釈は観客一人ひとりに委ねられていると言える。
  余韻の残る印象的な結末です。
 「結局、夢か現実か?」というのは分からないままですが、この映画が伝えたいことはそこではありません。「主人公が、そこが夢か現実かどうかを確かめなかった」というところが重要なのです。「夢だろうが現実だろうが些末なことだと気にしなくなった」、つまりそれにより「トラウマの克服」を見事に表現しているのです。

 さて、それではあの結末をどのように作っていったのか想像してみます。物語全部はちょっと長すぎるのでやりません。前提として、「初めにテーマありき」であると仮定して推論を立てていこうと思います。

①テーマは監督が語っているように「トラウマの克服」。
②せっかく映画なんだから、「トラウマの克服」を視覚的に表現したい。
③「トラウマ」は「主人公が夢にとらわれている」ことで表現できる。
④とすると、「トラウマの克服」は「夢にとらわれなくなった」ことで表現できるだろう。
⑤つまり、「主人公が夢にとらわれなくなる;夢だろうが現実だろうが、目の前のものを受け容れるようになる」ことを、視覚的に表現できればよい。
夢か現実かどうかを判別できる「トーテム」というアイテムを導入しよう! 主人公がトーテムを無視することで、夢か現実かを判別する強迫観念から逃れたことを表現できる。
⑦主人公がトーテムが回り続けるかどうか確認しないまま終わるという結末ができあがり!

 できました。逆算。このようにして地道に物語を構築していけば面白いお話ができそうです。
 ただ、やっぱり飛躍的な思考力、ひらめきのようなものはきっと重要で、たとえば⑥なんかはなかなか思いつかないアイデアだと思いませんか? 僕だったら⑤のところで止まって、もっと面白くないアイデアで無理矢理結末に繋げようとしてしまうかもしれません。よくないね!
 結局ノーラン監督のイマジネーションの豊かさがこの結末を生んだわけですが、こういう考え方も物語を構築する上でちょっとは助けになるんじゃないかと思います。

 今回はテーマから結末を導いただけですが、本来ならストーリー全体、細部にわたって導かなければなりません。たとえば、

①テーマは「トラウマの克服」。
②「トラウマ」は重い方がいい。「トラウマ」を「妻の死」にしよう。
③つまり「妻の死を克服する」物語にしよう。
④ミッションの成功がそのままトラウマの克服に直結するようなミッションにしよう。
⑤ミッションが成功すれば主人公の「妻殺し」の嫌疑が晴れ、家族の元へ帰れることにしよう。
……

 みたいな感じで。

 物語を丁寧に作るのって大変ですね……。もっと頭の回転が早ければ、飛躍的な思考力があればなあと思います。でも何事も訓練ですね~。
 なにはともあれ頑張ります!

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