2015年1月24日

阿闍梨餅

 阿闍梨餅を初めて食べる時には少しばかり驚きがある。見た目は火山をぺしゃんこにしたような、平たく丸い形状だ。それから焼いたまんじゅうのようなきつね色をしている。まんじゅう……なのか? いやいや、しかし餅というからには餅に違いない。云々。などと考えている時間が勿体ないので実際に食してみると、すぐにわかる。なるほど。餅だ! もちゃっと歯にひっつくような食感。追ってやってくるのは、ふんわり香る「和菓子~!」って感じの匂い。もぐもぐ! 中には餡が入っている。全体的に詰まった餡は、多すぎず少なすぎず甘すぎない、均整のとれた味わいだ。なるほど、餅のなかに餡を入れるという発想は面白いじゃないか。もちゃもちゃもちゃ! とつい食べ進めてしまうが、親指と人差し指で輪をつくった程度の大きさ(個人差あり)ゆえ、すぐになくなってしまうのだ。恐ろしいことに。ばら売りしていて、税込みでも一個108円で買えるのだけれど、ここはひとつ、10個入り1,188円(税込み)でどんと買いたい。日持ちはあんまりしないらしい、どうやら製造日より常温で5日間はもつとのことだが、さすがに10個も一人で食べていては余らすだろう。だがそんなもの、余ったぶんは人にあげればいいのだ。幸福のおすそわけなのだ。世界平和に貢献したと思えば安いものだろう。

 京都出町柳に居を構える本店は簡素でありながら道路に広く面した横長の造りとなっており、入ろうとする人に余計なプレッシャーを与えている。本店と言うだけあって、店内は静かでなかなかいい雰囲気ではあるが。なので精神虚弱体質の諸兄には百貨店の出張店舗をおすすめしよう。だいたいどこの百貨店にも満月(阿闍梨餅のお店の名前)は入っている気がする(著者の感覚。要出典)ため、そこで買うのがよろしい。百貨店はすばらしい。上質なおもてなしでありながら、同時に多くの客をさばくための均一なおもてなしでもある。深く客の懐に踏み込んでこないのもまた、優しさなのである。

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